ねこさいんの足跡

にゃーんの翻訳

また美術館行った

今週のお題「特大ゴールデンウィークSP」

今日も美術館へ行った。

今日向かったのは栃木県立美術館「画中のよそおい」展だ。この辺りは実は宇都宮の駐屯地の跡地なのだが、学校が密集しているせいで比較的交通の便がいい。ペーパードライバーの私には大助かり。ここの美術館が、私が美術館に行くようになったきっかけであり(妹の課題について行ったら私がハマってしまったのだ)、高校生時代は足繁く通っていたので、いわゆる思い出の地である。ここで友人の塾の終わりを待ってみたり、一人になりたい時に駆け込んだりしたものだ。


展示前半は服の描かれた絵が並んでいる。フランスやイギリスの、やたらがさばるクリノリンだかなんだかの詰まったドレスや、和服の絵が目立つ。貴族の衣装遍歴は深堀すると面白いのだが、今回は別の作品に目が止まった。
小堀鞆音「恩賜の御意」は、作者が栃木にゆかりがあるため、よく美術の先生が試験に出した作品だったので覚えていた。菅原道真が、かつて宮中にいた時に帝に貰った衣の匂いを嗅いで、都の生活を思い出してしみじみしている絵だ。作者は歴史に秀でていて、時代考証をしっかり行って歴史画を描いていたという。文献などからここのシーンを見出した作者は嗅覚がプリミティブな感覚で、感情や記憶と密接な関係があることを体得しているのだろう。趣味のいい庭などの表現にも目を向けると面白い。間違っても雑草ぼうぼうの地に住んでいたりはせず、野菊が咲いていたりして、華美ではないが品の良い感じがつたわってくる。


後半には、立体作品も含めたバリエーション豊かな作品があった。
テリー・ウィンタース「14点のエッチング集」のコメントに、「この作品は一点を除き、レントゲン写真を題材に書かれている。レントゲン写真に映された骨と、抽象的なパターンに直接の関係はないが、並べると有機的な趣が発生する」という内容が書かれていた。それでいいのか、と私は思った。科学の人間が顔を真っ赤にして「真面目にやれよ!」と怒鳴りつけてきそうであるが、ちょっと面白い、適当な感じを楽しむアートもまたキャッチーであった。
会場で異色を放っていたのは齋藤千明「空蝉のかたち」であった。それは紙でできた服が画用紙にはってあるのだが、紙の服にはところどころレースのように穴が空いている。それは切り絵の技法で切り出すとしたら薄い紙でとても切りにくそうだし、薬品かなにかで溶かすにもほかの紙との兼ね合いがあってどうも大変そうだと思った。きっと気の遠くなるような時間をかけて作っているのだなあ。タイトルが「空蝉」とのことで、恐らく服を抜け殻に見立てているのだろう。それはただの服でもなく、黒いインクや暖色系の花であしらわれているので、きっと誰かの思い出やら執念やらに溢れているのだろう。感情は時間とともに酸化するのかもしれませんね。



栃木県立美術館http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/schedule/index.html